テーマ:震災と現代経済、その復興と未来社会の展望
日時:2011年10月8日(土)、9日(日)
会場:立命館大学BKCエポック・ホール、エポック教室 アクセス(公式HP) キャンパス構内図(公式HP)
<開催趣旨>
2011年3月11日の東日本大震災は、歴史的な大きさの災害というだけではなく、原子力発電所の事故を誘発し、未曾有の広がりを見せています。行方不明者の捜索も続けられ、また原発事故はまだ鎮静化に向けた必死の作業が続けられています。そうした中、大きな余震が続いているばかりか、周辺部では大規模地震が誘発されています。その意味では、現在もまだ東日本大地震は続いているといっても過言ではありません。
歴史的な災害をもたらした今回の地震・津波は、それが歴史的な出来事であるだけに広範囲な問題を私たちに投げかけているといえます。それは今回の事態が単に自然災害という範囲にとどめることはできない問題まで浮き彫りにしたからです。福島の原子力発電所の事故はそのことを端的に示しているといえるでしょう。原子力行政の在り方や、営利事業と安全性の二律背反の関係、あるいは今も現場で厳しい状況におかれている原発労働の実情など現代の社会システムが抱える矛盾の具体的な姿の一つとしてとらえることができます。
復興に向けた構想も検討され始め、いくつかのアイデアも提起され始めています。例えば、4月10日のNHK日曜討論では「大震災から1か月 どうなる日本経済」と題して復興への道筋を識者に語らせています。このなかで、今回の震災が社会科学的見ても重要な課題を投げかけていることが露わになってきました。一方の論者(大田弘子政策研究大学院大学教授等)は、復興の過程でTPPへの参加や電力自由化などの規制緩和や市場開放を積極的に推し進める。また別の番組では、復興税構想に批判し、公務員の削減や賃金の切り上げを通して小さな政府をめざし、市場原理にのった復興を提唱しています。これに対して、内橋克人等の論者は、エネルギー政策を含めこれまでとは異なった「全く新しい社会構想を構築する必要」を説いています。今回の震災は、これまでの政策やビジョンに対するオータナティブを示すほどの事態だと主張されているわけです。
このように、今回の震災は、自然災害をめぐる限られた研究課題ばかりではなく、これからの社会システムをも構想しなければならないという大きなテーマを私たちに突き付けいています。基礎経済科学研究所は、阪神・淡路大震災の経験とその復興を研究対象とする優れた研究者を配し、これまでも様々な発信をしてきました。また、新たな社会システムを構想する「未来社会論」へ積極的にかかわってきました。
震災関連の問題ではすでに7月に専修大学で開かれた東京集会で、震災、原発問題について取り上げましたし、今後も長くこの問題に取り組んでいきます。こうした流れを受けて、第33回を数える今回の研究大会では、東日本大地震をめぐる問題を軸にしつつ、これから展望するべき未来社会をも考察する全体会を設定し、分科会においては関連するテーマやそれ以外の多くのテーマを設定して交流したいと思います。
<第1日目>
9:30-12:00 並行セッションⅠ
分科会1 「TPPとフェアトレード」 会場:K304
司会:大西広
報告1:大野敦 「フェアトレードとTPPにおける概念整理」
報告2:井上宏 (龍谷大学名誉教授)「現代アメリカのグローバル戦略とTPP」
報告3:江尻彰 「TPPと日本の農業」
分科会2 「震災・原発惨事からの復興の道―地域産業クラスター、文化・エコロジー・農業の役割を考える」 会場:K305
司会:藤岡惇
報告1:遠藤雅彦「福島県いわき市からの私の避難体験と被災者の要求」
報告2:小池洋一 「バリューチェーン再編と産業クラスターを視点に考える」
報告3:松田文雄「滋賀県下における農業の第6次産業化と仕事おこしの展望」
分科会3 「自由論題報告」 会場:K306
司会:北野正一
報告1:松浦章 「原発リスクと損保の社会的役割」
報告2:大西一弘 「終身雇用契約による3段階モデルの均衡」
13:00-14:00 記念講演 会場:エポックホール
安斎育郎 「フクシマの原発災害が問いかけるもの」
司会:松本朗
14:00-17:00 共通セッションⅠ
「震災後の復興と未来社会を展望する」(立命館大学経済学部研究プロジェクト共催企画) 会場:エポック・ホール
報告1:松尾匡 (立命館大学)「震災復興を企業形態から考える」
報告2:平岡和久 (立命館大学(うつくしまふくしま未来支援センター))「東日本大震災と復興の基本方向をめぐって」
報告3:山川充夫(福島大学学長特別補佐) 「FUKUSHIMA復興支援からみえてくること─福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの活動─」
コメント:小貫雅男 (滋賀県立大学名誉教授・里山研究庵ノマド主宰)「21世紀未来社会論の欠如とそれがもたらす震災復興の混迷―上からの復興を許す土壌 ―」
司会:藤岡惇(立命館大学)
17:00-18:00 研究所総会 会場:エポックホール
18:00-20:00 懇親会 会場:エポック1F食堂
<第2日目>
9:30-12:00 並行セッションⅡ
分科会4 「グローバル化するアジア経済と日本」 会場:K304
司会:和田幸子
報告1:東愛子 「東アジア重厚長大鉄鋼産業と日本」
報告2:三浦誠弘 「IT産業の急拡大と日本のIT労働者」
報告3:阪本将英 「自然災害に関わる日本の交際協力の問題点―インドネシアの巨大津波災害を事例に―」
報告4:山口整 「グローバル化に揺れる国民国家の統治構造―トルコ共和国における地方自治制度の事例から―」
分科会5 「ケータイ資本主義」 会場:K305
司会:増田和夫
報告1:林弥富
報告2:岡宏一
報告3:増田和夫
分科会6 「Understanding Capitalism研究」 会場:K306
司会:角田修一(立命館大学)
報告1:角田修一 「社会経済学におけるミクロとマクロ」
報告2:井貝浩 「公正と効率を総合した資本制経済の持続について」(仮)
12:30-12:50 理事会 会場:K307
13:00-17:00 共通セッションⅡ
「原発問題を考え、政策代案を探る」(立命館大学経済学部研究プロジェクト共催企画) 会場:K309
報告1:張貞旭 (松山大学)「日本の原子力損害賠償制度(東海村臨界事故と福島事故関連)を中心に、アメリカを始め韓国・中国などの原賠法の現状と問題点を取りあげる」
報告2:清水修二(福島大学) 「原子力災害と地域―被災の実態そして再生への道―」
報告3:藤岡惇 「福島における核の大惨事は、経済学に何を提起しているか」
司会:角田修一