秋季研究大会の日程・場所・共通セッション報告者の概要が固まりました。9月16・17日(土・日)、会場は名古屋学院大学名古屋キャンパス「たいほう」にて開催します。実行委員長は名古屋学院大学の阿部太郎さん(所員)、現地担当は桜井善行さん(所員)です。
共通セッションⅠ(9/16・土)「労働者協同組合・ワーカーズコープをめぐって」
ひとつは、「労働者協同組合・ワーカーズコープをめぐって」(16日・土曜午後)です。労働者・市民が労働ならびに経営主体となる「協同労働」に法人格を与える、「労働者協同組合法」が2022年10月に施行されました。この法によって、新自由主義によってズタズタに分断されてきた、働く人々と地域コミュニティの再生と持続可能性が期待されています。研究企画委員会(まとめ役:藤岡惇さん、後藤宣代さん)は、理事会からの依頼により企画を進めてきました。
みなさんご存じのように、基礎研は1968年に発足し、2018年には50周年を迎えました。新たな半世紀に向かって、理事会は、全員参加型理事会をめざし、5つの委員会を設置、その一つが研究企画委員会です。50周年の記念事業としては、出版助成と懸賞論文公募を行いました。懸賞論文の若手部門では、二人による共同論文が受賞しました。今回の共通セッションには、その受賞者の二人、菰田レエ也さん(所員/鳥取大学)と田井勝さん(所員/鳥取大学・非常勤)にご登壇していただきます(受賞論文「サード・セクター組織によるコミュニティ形成の理論的基盤の検討-親密圏と社会関係資本の相互補完を通じた考察-」)。今回、菰田さんは労働者協同組合の歴史を、田井さんは労働者協同組合運動の最前線を、さらに第3の報告としては、後藤宣代さん(所員/福島県立医科大学・非常勤)が、ポスト資本主義を見据えて、理論的・思想史的位置づけを行います。司会は田中宏さん(所員/立命館大学・名)です。
今回の共通セッションでは、若い知性と実践の取り組みの報告を聴いて、大いに議論を深めたいところです。さらに、この協同組合論・ワーカーズコープを、現在、世界的に議論されている「ポスト資本主義」、「オルタナティヴ社会」の文脈のなかに位置付け、さらに20世紀の社会主義運動の歴史的成果も踏まえ、21世紀の新たな社会形成を展望していくことを意図しています。
共通セッションⅡ(9/17・日)「環境・産業・地域社会-東海地域を例として」
もうひとつは「環境・産業・地域社会-東海地域を例として」(17日・日曜午後)です。東海地域はトヨタをはじめとした大企業が多数立地する、日本あるいは世界有数の工業地帯としても知られています。他方で、脱炭素・カーボンニュートラルなどの名称に象徴されるように、気候変動危機への対応、脱炭素社会への転換が世界的な共通認識となる中、東海地域では本課題への対応がとりわけ重要な意味を持っています。それは、単に政府や企業が取り組む環境政策の域を飛び越え、自治体、市民をも巻き込んだ都市政策や雇用政策、あるいは医療・介護・教育・保育なども含めた人々の生活と暮らしにも多大な影響を与えるものです。
本セッションでは、こうした課題について東海地域にゆかりのある研究者・活動家の皆さまから報告をいただき、東海地域の環境・産業・地域社会等のあり方について検討します。報告者は、猿田正機さん(中京大学・名)、尾形けい子さん(緑の党共同代表)、井内尚樹さん(所員/名城大学)にご登壇いただきます。
猿田さんはトヨタ研究の第一人者として知られ、近年ではスウェーデン・ボルボと日本・トヨタの比較で気候危機・民主主義の危機と自動車産業の課題を研究されています。尾形さんは緑の党共同代表であり、「ストップ気候危機・安心の暮し・ジェンダー平等」をスローガンとしてたたかった前愛知県知事選挙立候補者としても知られています。井内さんは地域政策・産業集積論の研究者として、近年では地域資源としての自然エネルギーを基礎とした循環・小規模・分散型地域系経済の構築を研究されています。
また、コメンテータに後藤陽司さん(所友)をお迎えし、愛知での労働・社会運動の実践的観点から各報告へのコメントをお願いしています。
なお、1日目(9月16日・土)には総会を実施します。コロナ禍でここ数年は懇親会を実施していませんが、今夏の感染状況等を踏まえて実施を検討します。