学術研究の自主性・独立性を確立するために —政府の「日本学術会議の在り方についての方針」に抗議する—

学術研究の自主性・独立性を確立するために
—政府の「日本学術会議の在り方についての方針」に抗議する—

 

 政府は、「日本学術会議が国民から理解され信頼される存在であり続けるためにはどのような役割・機能が発揮されるべきかという観点から検討を進めてきた。」として、12 月 6 日に「日本学術会議の在り方についての方針」(以下、「方針」)を公表した。
 「方針」では、【科学的助言等】、【会員等の選考・任命】、【活動の評価・検証等】、【財政基盤の充実】、【改革のフォローアップ】という 5 つの柱で 8 項目の提言をしている。いずれも問題含みであるが、なかでも(1)「政府等との問題意識・時間軸等の共有」するとして、学術会議の下請け機関化をねらっていること、(2)「会員等以外による推薦などの第三者の参画など」会員任命に外部が関与すること、(3)「外部評価対応委員会の機能を強化」するとして外部の干渉を制度化しようとすることなど、学術会議の独立性を根幹から破壊する内容が盛り込まれていることは重大である。
 日本学術会議は、2021 年 4 月に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を発表した。
 その前文で「17 世紀以来の長い歴史を有する各国のアカデミーの設置形態は多様ですが、自由で民主的な国家では共通して、こうした役割を担う上で不可欠の要件が認められます。すなわち、①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性、の5点です。この「5要件」には、近視眼的な利害に左右されない独立した自由な学術の営みを代表するアカデミーの活動が、学術の豊かな成果を広く国際・国内の社会に還元する役割を通じて公共の福祉を保障するとの世界共通の信念が託されています。」と述べられており、これらは学術研究の自主性・独立性を確立するために準拠すべき原則であると考える。
 2020 年秋、学術会議会員のいわゆる「任命拒否」問題が明らかになり、わが基礎経済科学研究所を含めおびただしい数の学協会・団体等が反対・抗議の声明・要望書を発表するなど、広範な世論の反発・批判を呼ぶこととなった。しかし、その後も任命拒否の理由すら説明されることなく、会員未充足という異常事態は解決されないまま、今回日本学術会議の独立性を破壊する新たな方針が出されてきたことに強い憤りを禁じ得ない。任命拒否の理由を説明しない政府が、「方針」では「透明」性をしきりに強調しているのは矛盾の極みである。
 わが基礎経済科学研究所は、今回の「方針」に断固抗議すると同時に、多くの学協会や市民に「方針」に反対する取り組みに共に参加することを呼びかけるものである。

2022 年 12 月 20 日 基礎経済科学研究所理事会

 

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