東日本大震災被災者・東京電力福島第一原発事故被害者のみなさん、日本、世界のみなさん!
わたしたちは大震災と原発事故発生から、ちょうど1年になるこの3月に、いまなお放射能汚染に脅かされている福島市で、日本の経済学系5学会の協働による集会を開催しました。それは、社会科学は机上のモデルを扱うだけの営為ではなく、現実の人々の苦難と憂慮から発する営為であるという初心に戻りたいと考えたからです。
集会初日には、放射能汚染による生活破壊、地域・住民の分断と闘っている基礎自治体の首長、放射能被害と闘う農民運動の活動家、新しい市民運動を立ち上げたミュージシャンの声を聞き、地域・住民・基礎自治体・地域と深く結びついた研究者、域外市民の連帯心のなかから復興のイニシアチブが生まれていることを確認しました。また、福島の住民の方から、科学および科学者への信頼が失われているという発言がありました。わたしたちはそれを重く受けとめます。
本日の午前には、学術会議前会長の廣渡清吾さんを迎えて4学会の代表者が震災問題への社会科学者のかかわりについて討議しました。わたしたちが一致したことは、社会科学は、地域における生活と自然の持続可能性をはかり、住民の自治・生活主権を尊重した復興政策と経済体制の構築のために貢献すべきであるということです。
午後には、福島県復興ビジョンの策定に尽力した鈴木浩さん、福島県内外の人たちを集めてチェルノブイリ調査団を組織した清水修二さん、そしてドイツで脱原発の方針が再確立されるさいに大きな役割を果たしたミランダ・シュラーズさんを迎えて、ローカルな動きがグローバルな動きと連動していることを知りました。
二日間の討議を通じて、わたしたちは以下の3点が、震災・原発事故にかかわる緊急課題であることを確認しました。
1)地域の自治と自主性を確保した住民本位の復興政策を実現すること
2)原発事故とそれに伴う放射能汚染の責任を明確にし、被害者への迅速・公正な補償をおこなうこと、とくに未来を担う子どもたちの健康の確保に万全を期すこと
3)生活の安全を基礎とした地域・環境・エネルギー政策への転換、とくに危険性の高い原子力に依存した電力供給から早急に転換すること、この転換にともなう地域経済基盤の再構築に取り組むこと
わたしたちは、これらの緊急課題の追求は、以下3点のより広範かつ長期的な課題に結びつくと考えます。
1)市場経済に公共的な枠組みを適切に与える持続可能な経済体制の構築
2)国策による地方統制・住民支配ではない地方自治と国民主権の再興
3)地域、国家、世界全体のレベルで、互いに協力しあい連帯するモラルを構築すること
これらの緊急課題、および長期的な課題は、日本の社会科学に対して、さらに一段の発展・深化を要求しています。わたしたちは、震災・原発事故によって被害を受け、苦悩しながら困難を打開しようとしている人々との連帯を意識し、自らの社会的活動および研究活動をおこなうことによって責任を果たそうとするものです。
2012年3月25日 震災・原発問題福島シンポジウム参加者一同