働きつつ学ぶ研究科

 

2024年9月7日の総会で、所員・所友の方の「良い論文を書きたい」という発達要求に応えるための新しい組織として「働きつつ学ぶ研究科」の創設が決定されました。この間、所内で数年にわたる議論を尽くして決定したもので、基礎研活動をいっそう発展させる契機としていきたいと考えます。「働きつつ学び研究する権利」を保障しようという私たち基礎研の活動にご理解いただき、多くの方が基礎研に加入されることを願うものです。 (基礎経済科学研究所理事長 小沢修司)

 

論文の執筆・発表のための支援を行ないます

—-「働きつつ学ぶ研究科」の発足に当たって(基礎経済科学研究所研究教育支援委員会)

 

基礎経済科学研究所では2024年9月の総会で「働きつつ学ぶ研究科」の設置を決め、大学等に属さない所員・所友の論文執筆のサポートを組織的に行なう体制を整えてきています。これは基礎経済科学研究所の設立以来の理念である「働きつつ学ぶ権利を担う」という方針を具体化したもので、しばらく停滞していたこの活動を再開、強化することを目的としています。

もちろん、研究所は論文執筆を義務としているわけではありませんが、過去には本研究所のホームページkks_article-view.pdf (kisoken.org)に紹介されていますように約80本の論文執筆支援を行なっています。そして、このほとんどが社会人として働きながら書かれたものです。そして、基礎経済科学研究所はそういう論文にこそ価値があると考えてきました。このウェブ・ページにはそうして書かれた論文が7本アップされていますが、私たちはそれらが学術的にも非常に高い価値を持ったものであると考えています。

実際、これらの論文の殆どは執筆者の皆さんが自分の労働現場や生活現場で得た情報をまさにそこで得た生き生きとした感覚を持って書かれているからで、これは少しの「現場調査」で大学などの研究者が書く論文とはまったく違ったリアリティーを持っています。私たちはこのような論文がもっともっと書かれるよう、研究所全体として努力したいと考えています。

ただ、もちろん、こうした研究には単なる情報収集と「現場感覚」だけではなく、それらを分析する「理論」も必要です。たとえば、金融に関する諸現象を論ずるには『資本論』第3巻の「利子生み資本」論に関する理解は当然の前提となります。そして、そのために研究所ではそうした理論学習の場として「資本論講座」をこの間復活しました。今後はこの講座に続く「帝国主義論」の範囲の講座も復活する予定で現在準備しています。また、現在、本研究科は月に1,2度のペースで開催されている「ゼミナール(学科)」を全国に12個有し、そこで日常的に各分野を学ぶことも重要な研鑽の場となっています。本研究科では、この他にもzoomを利用した個別支援サービスも一部例外的に提供しています。

以下、具体的に支援の制度を説明しますので、ご希望の方は基礎研事務局(office@kisoken.org)までご連絡ください。

 

論文執筆支援対象者のための学習・発表機会

① 『資本論』の基礎的理解を深めるための研究所主催zoom講座の受講(2024年10月まで開催していた『時代はさらに資本論』講座。申請により録画視聴可能。2025年11月から「現代資本主義論」講座を開講。)

② 研究所に設置された少人数ゼミナール(後段で具体的に示す)の1つ以上の場に継続参加し、適宜研究発表を行う。

③ 地域にゼミナールが設置されていない場合など事情のある場合は、研究テーマに合う研究支援担当者を個別に決め、zoomなどを用いた個別研究支援を受ける。

④ 論文執筆に当たっては、研究所ホームページにある「論文執筆ガイド」をよく参照する。特に過去の論文を読み、その執筆スタイルを学ぶ。

⑤ 執筆した論文は「働きつつ学ぶ理論と実践を融合した高水準の研究論文」として本研究科に認定されることができる。

⑥ 認定された論文は、研究所発行の『ディスカッション・ペーパー』として発表すること、あるいは『経済科学通信』に載せることが出来る。ただし、後者の場合、査読を受け、査読者から補充、リライトの指示があった場合には、それに従わなければならない。その他の媒体での公表も歓迎される。

⑦ 論文執筆のための研究支援を受けようとする所員・所友は年間1万円の追加支援料を支払わなければならない。また、追加支援なしに書いた論文が⑤と同様に認定されることを希望する場合はその審査のための審査料1万円を支払わなければならない。

 

ゼミナールの構成と研究支援担当者

<基礎研究科ゼミ>

ゼミ名称 学習テーマ(直近のもの) 開講方式 支援担当者 事務局
東京『資本論』を読む会南部ブロック 『資本論』第1巻 東京港区三田周辺で開催 大西広 吉井舜也
東京『資本論』を読む会西部ブロック 『資本論』第1巻 武蔵野市吉祥寺で開催 明石博行 森谷一夫
京都『資本論』を読む会 『資本論』第1巻 Zoom 小沢修司 瀬野陸見
外書講読ゼミ Brisen Filep, The Rise for Neo-liberalism and the Decline of Freedom 大阪堺筋本町瓦町・アイクルの部屋で開催 阿部弘 高田好章

 

<専門研究科ゼミ>

エコロジカルな人間発達を考えるゼミ テキスト選定中 京都市上京区スペースウエルで開催。Zoom併用 藤岡 惇 松田文雄
大阪第三学科(金融・流通・協同組合論ゼミ) 佐々木隆治『資本論第3巻』 大阪堺筋本町瓦町・アイクルの部屋で開催 高田好章 高田好章
大阪社会構成体発達論学科 河野龍太郎『日本経済の死角』 京都市西京区の個人宅とZoomの併用 田中宏 田尻和夫
東南アジア社会論ゼミ テキスト選定中 zoom 和田幸子
労働学科 伍賀『雇用と働き方から見た現代貧困論』 Zoom 高田好章 高田好章
ジェンダー・ゼミ 橋本健二『女性の階級』 Zoom 柴田啓一 田中與念子
東京『資本論』を読む会北部ブロック 『資本論』第3巻 Zoom なし 原田收
神奈川「明日の社会を語る会」 自由発表 Zoom 検討中 平松民平
現代世界論ゼミ(略称) 当面、各人の個人報告 Zoom 後藤康夫

加藤光一

藤田実

中根康裕

後藤康夫

(暫定)

食と農を考えるゼミ 樫原正澄『食と農の環境問題』 Zoom 樫原正澄

原田佳子

樫原正澄

田中與念子

 

基礎経済科学研究所 働きつつ学ぶ研究科 ゼミナール案内

 

<東京『資本論』を読む会南部ブロック>

東京支部が運営しているゼミは東京と神奈川で4つありますが、それらの元となったゼミが本ゼミで、他は本ゼミから分かれていったものです。以前に関西在住だった基礎研会員や定年後に『資本論』を読もうとなった方、そして支援担当者の属する慶應義塾大学の聴講生、卒業生、「通信教育部」学生などが参加し、特に最後の「通信教育部」学生は毎年新規に加入があります。「通信教育部」は「働きつつ学ぶ」方たちが中心なので本研究科の趣旨に合っています。初心者でも入れるゼミ運営をしていますので、新規参加歓迎です。

 

<東京『資本論』を読む会西部ブロック>

このゼミは駒澤大学で小規模に実施していました。コロナ禍以降、大学内での開催が難しくなり、武蔵野市吉祥寺に会場を移設しました。第1巻から再スタートして、参加人数も各地で資本論の学習会に参加していた人たちと地元武蔵野市民も加わって、現在では20名規模になっています。ほとんどの参加者が全3巻を読了していることもあり、内容は資本論の文献解釈にとどまらず、諸々の論争や歴史学・哲学などにも触れた幅広い議論をしています。お互いに「○○さん」付けで呼び合い、フラットな関係で学びの場を築いてきています。

 

<京都『資本論』を読む会>

『資本論』第1巻を繰り返し読んでします。参加者は5名で落ち着いています。月に1回、基本的に第3火曜日の19時から2時間程度開催しています。1回に読む分量は国民文庫版で言うと20〜30ページ程度と比較的ゆっくりのペースでじっくりと議論しています。訳書は決めていません。気になった訳語や表現なども参加者が原著で確認してくれたり訳書の違いで盛り上がったりします。現在は第4章貨幣の資本への転化が終わったところです。第1巻は繰り返し読み続けて行くつもりですので、途中から参加いただいても十分議論に加わっていただけます。大歓迎します。事務局は瀬野さんが担当いただいています。

 

<外書講読ゼミ>

論文執筆に至るためには外書の講読も不可欠で、そのために基礎研には「外書講読ゼミ」も設置しています。支援担当者の元大学教員がわざわざ東京から毎月大阪にお越しになっての開催で、いつも大変充実した討論を行っています。英書講読の力をつけたい人に最適なゼミです。

 

<エコロジカルな人間発達を考えるゼミ(愛称「天然人ゼミ」)>

このゼミでは,宇宙史におけるイノチとヒトの位置と価値・使命という哲学問題を深めるとともに、ヒトが個人として尊重され、免疫力に秀でた高次の天然人へと成長していくための未来社会のありかたを探究しています。月1回、最終日曜日に定例ゼミを行い、ほぼ半年かけて、1冊の本を読破します。また適宜、個人の研究報告、リサーチ支援を行っています。

 

<大阪第三学科(金融・流通・協同組合論ゼミ)>

この学科は,ゼミ名に表現されている金融・流通・協同組合に関するものに関わらず,あらゆる面から経済学を学んでいこうという,現代資本主義を対象にした学科です。
ゼミは毎月2回開かれ,月前半のゼミでは現代資本主義に関するものを中心に,月後半のゼミでは古典文献を取り上げています。

開催会場情報など,詳細は次のURLで示される「大阪第三学科」ホームページをご参照ください。ysweb.g.dgdg.jp/ytakada/kisoken/index.html

 

<大阪社会構成体発達論学科>

ゼミの事務を担ってくださっている方の京都市西京区の自宅とzoomの併用で開催。現在のテキストは斎藤幸平『マルクス解体』で毎回1章ずつ、報告に基づく活発な議論をしています。参加者は6-7名。経済理論学会等に活発に論文投稿をされている参加者もいます。

 

<東南アジア社会論ゼミ>

アジア諸国の政治経済のしくみや問題点,日本経済との関わりなどについて,歴史や文化,人々の生活意識の特質なども視野にいれて科学的に学ぶゼミです。輪読会の形で毎月1回開催しています。

 

<労働学科>

労働学科では、労働問題に係る専門的なテキストを輪読しながら、理論的なものから実践的なテーマも含めて包括的な議論を行っています。現在は、労働者研究者、ユニオン活動家、学校教員、院生・学生など、多様なメンバーが集まっています。現在は田中洋子編著『エッセンシャルワーカー』を読んでいます。今後も、立場や考え方の違いを超えて、現下の労働問題について真剣に議論していければと思います。ぜひご参加ください。

 

<ジェンダー・ゼミ>

以前の支援担当者が亡くなられたということもあり、ここ約1年間、臨時に慶應の大西広が担当し、『「人口ゼロ」の資本論』を輪読して来ました。人口問題とジェンダー問題が深く関わっているとの一貫した本ゼミの考え方によるものですが、この後、支援担当者を駒沢大学の姉歯暁さんに代わっていただき、ジェンダー問題にテーマを戻すことになります。

 

<東京『資本論』を読む会北部ブロック>

現在のレギュラーメンバーは元大手電機会社の技術者・労安問題の専門家・元教員など4人、チューター役はなく、お互いフラットな立場で議論しています。

 

<神奈川「明日の社会を語る会」(略称ASK)>

神奈川『資本論』を読む会として続けてきた本ゼミはテーマを限定せず自由に語り合う会としてしばらくやってきましたが、人数減などのため読書対象とする本の選定を含め再度再編する方向で検討中です。

 

<現代世界論ゼミ(略称)>

正式ゼミ名は、「現代世界論-私たちはどんな時代を生きているのか:山田盛太郎『日本資本主義分析』(1934年、岩波文庫1977年)に学んで、21世紀のグローバルな世界の「解剖図」(構造・対抗・展望の全体像)を描き出そう」で、当初はゼミの前半で4人の支援担当者の研究テーマ報告を行ない、後半ではゼミ参加者が問題関心・テーマと研究計画を報告。その後にテキストを決めます。意欲あふれるゼミ参加者を歓迎します。

 

<食と農を考えるゼミ>

本ゼミでは、現代の食と農が抱える複雑な諸問題について、社会・経済的に分析・検討し、持続可能な食と農のあり方について探究・研究することをめざしています。食と農に関心がおありの方は、ぜひゼミに参加して、一緒に勉強しましょう。