基礎研WEB政治経済学用語事典

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 機械制大工業

 機械制大工業はたんに大工業あるいは近代工業ともいい、マニュファクチュア(工場制手工業)に代わる生産様式である。生産様式の変革は、マニュファクチュアでは労働力を出発点にするのに対し、大工業では労働手段つまり機械を出発点とする。やがて機械による機械の生産は大工業を自分の足で立たせた。機械の利用は人間の熟練に代わって、自然科学の応用に基づく自然力の利用を必然とするとともに、労働過程の協業的性格を必然とする。
 
 機械の資本主義的利用は労働者に大きな影響を及ぼした。第1に労働が単純化したため、多くの女性や子どもが労働者の群に加わった。第2に機械は労働時間を短縮する手段であるのに、労働時間を大幅に延ばす手段となった。工場法で労働時間が制限されると第3に機械は労働密度を高める手段となった。第4に機械は労働者の全面発達の可能性を切り開いたのに、労働者は部分機械に仕えることが終生の専門にされた。
 
 20世紀にはF.テイラーによって工場の科学的管理が始められ「計画と実行の分離」すなわち頭の労働と手の労働が分離された。それは大量一括生産(マスプロダクション)に道を開いたが、労働が無内容化する労働の疎外が深刻になった。
 
 

(1)マルクス『資本論』第1巻第13章
(2)基礎経済科学研究所編『時代はまるで資本論』昭和堂、2008年、第3講。
 
                                        (野口宏)