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近代経済学 |
大量生産 大量生産とは、一定の条件(人や場所、設備、原材料など)が整えば、同じ品質の製品がニーズに応じて継続的につくられることである。つくられた製品は、市場に供給されて大量消費される。 大量生産の起点をなすのは、産業革命である。イギリスを起点とする産業革命(18世紀後半〜19世紀前半)によって、それまでの農業社会は工業社会に変貌し、工業のあり方もマニュファクチュアから機械制大工業へと大きく変化した。機械生産は、人力などの制限を超える大規模生産に道を切り拓くが、20世紀以降にみるような大量生産(およびそれを担う大企業)はアメリカの工業化の過程で出てきたものである。 20世紀型の大量生産を可能にさせ発展させた条件として、次の3点があげられる。一つ目は、標準化され互換可能な部品の量産化である。この規格標準化は、小銃の互換生産方式を完成させたE.ホイットニーの功績とされているが、異論もみられる。L.マンフォードは、活版印刷術における標準化され互換(取り外し)可能な部品としての「活字」を規格標準化の嚆矢とみている。確かに、単能化・標準化され互換性をもち、組み合わせ・反復使用が可能な活字は、大量生産に道を切り開いた。 二つ目は、作業の標準化と作業管理の体系化である。F.W.テイラーによって開発されたもので、科学的管理法(テイラー・システム)と呼ばれている。個々の作業を要素動作にまで分解し、単位時間研究による最速時間を基準にして作業標準をつくり、さらに作業管理システムへ再統合したもので、熟練の細分化・標準化・再統合化を図ったものである。 三つ目は、H.フォードが自動車工場に導入した移動式組立生産システムで、フォード・システムと呼ばれている。ベルトコンベアを軸に工程の細分化・標準化・再統合化を図ったものである。生産工程に導入したベルトコンベア上に互換性部品を流し、作業標準に従って部品組立を行う。 大量生産システムは、低価格化・量産化によって市場の形成・発展に大きく寄与したが、それがはらむ分業化と専門化の原理、すなわち作業内容の細分化・単純化、管理労働と肉体労働の分離は、労働意欲の低下や組織の硬直化など種々の問題を引き起こす。さらに消費需要の多様化・個性化は、多品種少量生産システムへの転換を促している。 (十名直喜) |