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近代経済学 |
国有 国有とは、財産(生産手段)の国家所有のことをいい、国家財政支出、管理通貨制度などとならんで国家が経済に介入する手段または方法の一つである。 計画経済における国有と、市場経済におけるそれとは幾分性格が異なっている。国有化された企業は計画経済を行う社会主義国家によくみられる企業形態であり、国有企業は計画経済システムを維持するための重要な要素となる。社会主義国における国有化は、限られた資源を重点的・計画的に配分することを目的としており、生産手段の私的所有と生産・販売の社会化による矛盾の拡大を解消することを目指すものである。 他方、市場経済における国有は、企業の国有化よりも、産業の国有化といった現象が広くみられる。そこでは、国有化は国家による産業の直接統制といった性格を持つものとなり、一部では戦後のアメリカのように官営工場の払下げを行って再私有化を行ったり、直接的な国営を廃して間接的な援助統制措置をとったりする傾向がある。そもそも、市場経済における国有は、経済の不況や経営的危機に瀕した主要産業や、戦争の準備と遂行にとって必要な主要産業について行われるようになったのが始まりである。例えば、イタリアの産業復興社(IRI)にみられるように、電力、鉄、造船などの産業の株式会社が国有化され、破産から救済されたようなケースや、かつてのドイツにおける鉄、アルミ、航空機、自動車などの産業が国有化されて戦争に備えられたことがこれに当たる。2008年の世界恐慌におけるアメリカのGMの国有化も、救済のための国有化という側面をもつ。 市場経済をもつ資本主義国における国有化は、国が主要産業を直接に支配統制し、その産業のみならず全産業を間接的に統制干渉するものとして現れる(国家資本主義)。それらは結局、個別資本家が所有してきたものが国家の形態をとった総資本家の所有へと移行したことを意味している。 (1)橋本勲「産業構造とマーケティング」有冨重尋・柏尾昌哉編『日本の産業構造とマーケティング―産業別マーケティング・メーカー編―』新評論、1980年。 (2)木原正雄・溝端佐登史・大西広編『経済システムの転換―20世紀社会主義の実験―』世界思想社、1993年、第1章。 (3)伊藤誠『市場経済と社会主義―これからの世界―』平凡社、1995年。 (韓勇) |