基礎研WEB政治経済学用語事典

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 企業

 企業(business enterprise)とは、経済的活動を行なう事業組織のことである。事業(business)には、慈善事業などの社会的公共的な仕事もあるが、大半は経済的事業である。すなわち、人々の社会生活を支える財やサービスの生産、分配、消費という経済活動を担っている事業組織のことを企業という。
 
 現在の主要な経済事業組織は、営利事業組織としての私企業であり、私的資本によって事業主の利益を目的として事業が運営されている。これに対して、非営利の経済事業組織には、公企業と協同組合がある。公企業は、公的資本によって事業が運営される非営利事業組織であり、協同組合は私的資本によって事業運営が行なわれるが、経営原則によって非営利性が保たれている非営利事業組織である。
 
 社会にとって必要な公共性、社会性の高い事業分野すべてを担うことはできない(担わない)という私企業の営利性の限界を克服するところに、非営利事業組織の存在意義がある。協同組合も、市場メカニズムの中で経済的弱者が自分たちの生活や事業を改善するためにともに協力して行なう事業組織であり、財やサービスの供給それ自体が目的であり、利益は事業維持・拡大の原資とみなす点で、私企業とは区別されるのである。
 
 現在、私企業の一般的存在形態としての企業形態には、個人企業、合名会社、合資会社、株式会社、有限会社、合同会社、有限責任事業組合があり、個人企業以外は法律によって規制されている企業形態である。これに加え、特定の業種にのみ認められる企業形態として相互会社がある。
 
 以上の説明で明らかなように、企業の概念は法律上の「会社」の概念とは異なる。2006年以前に会社総数の過半数を占めていたのは有限会社であったが、会社法施行(2006年)とともに有限会社の新設が認められなくなり、既存の有限会社は特例有限会社と呼ばれる株式会社となった。その結果、現在では会社総数の95%以上を株式会社が占めている。しかも、その大半は中小企業である。
 
 

(1)小松章『企業形態論[第3版]』新世社、2006年、第1章、第4章。
                                       (廣瀬幹好)