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地主制 『経済学および課税の原理』の序文で、リカードは、土地の生産物が土地所有者である地主、資本所有者である資本家および労働者の3つの階級間で分配されると説いた。もちろん、リカードは続けて社会全体の所得分配に言及するから、彼には地主制(Landownership, Landowner System)を分析する意図はなかったにちがいない。だが、この説明は図らずも地主制の経済関係を簡潔に言い表している。 地主制の下、地主は自分の土地を農業資本家に貸し付け、農業資本家は、その土地に農業労働者を雇い入れて農場を経営し、そこで収穫した農産物を市場で販売する。農産物の販売収入の内、種苗の購入や土壌の維持などにかかる諸費用を控除した後、地主は地代を、農業資本家は利潤を、農業労働者は賃金を得る。このとき、地代は土地用役の、利潤は資本用役の、さらに賃金は労働用役の需要と供給によって決定される。特に、地代の決定は当事者間の自由な意思決定に委ねられ、もはや、近代以前の社会と異なり、一方の当事者による強制がそこに働く余地はない。資本主義的生産様式では利潤や賃金は市場の自由な運行に委ねられた。同様に、地主制の下では地代の決定も市場メカニズムに従う。地主制とは、一言で言えば、資本主義的生産様式に組み込まれた土地所有である。 もっとも歴史上、地主は単なる経済的階級ではない。イギリス産業革命の前後、地主が圃場整備や農道敷設などの農業投資、さらには鉱山開発にも力を入れる一方、工業投資の源泉となる社会的貯蓄の相当部分を用意したことはよく知られている。その上、イギリスでは地主階級は、19世紀末まで政治的に下院や内閣の多数派を形成するなど有力な政治勢力であり続け、また農村部の社会生活において借地農業者との間で強固な人格的依存関係を維持した。イギリスはもちろん大陸ヨーロッパや日本でも地主階級は政治的社会的影響力の大きい社会階級であり、資本主義的生産様式が確立する過程で、経済活動のみならず国内政治や社会生活においても主導的役割を果たしてきた。地主制は、この社会階級を経済的に支えた。とはいえ、その後の資本主義的生産の発展は地主制に有利に働いたとは言い難い。地主制は産業構造の変化あるいは農地改革の結果、解体に向かい、地主階級も政治的社会的影響力を失った。 (関根順一) |