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近代経済学 |
合理的経済人 合理的経済人とは、主流派経済学が通常前提する経済主体。自己利益を合理的に計算して追求する人間。分析の便宜のために、現実の人間から抽象して作った近似モデルである。 このうち、「自己利益」を追求することに対して、非現実的との批判があるが、方法論の問題としては、経済人モデルにおいても、名声なり他者の厚生なり共同体の利益なりを「自己利益」とみなす選好を前提することは可能で、本質的な批判とはならない。むしろ、各自が自分だけの物質的利益を追求することを前提しても、なおそこから社会調和や道徳的行動が導かれるための条件を考察するためのモデルであると言える。また、一見物質的利益と反したような選好を、各自の物質的利益の追求から合理的に説明するためにも、このモデルは用いられる。 なお基本的な経済人モデルは、他人の厚生低下や他者に対する優越を好む選好を前提しておらず、ここから市場均衡の調和性を導いているが、これらの選好を前提した場合にはどんな問題が生じるかも研究されている。 他方、経済人モデルの「合理性」の前提に対して、非現実的とする批判も見られる。これに対しては、分析可能なように、事態を単純化するための想定であり、合理的でない人間の行動を恣意的でなく定式化することは、かえって困難と弁明される。特に、企業行動に関しては、合理的利潤最大化にかなった者だけが結果として生き残っているので、あたかも合理的最適計算をしているかのようにみなしてよいとの反論がしばしばなされる。 現在、行動経済学、心理経済学、神経経済学などの分野が発生し、必ずしも合理的でない人間の行動に光が当たるようになっているが、これらは、単純な経済人モデルを補完し、現実に近づけて精緻化するものと位置づけられる。なお、これらの研究が見いだした非合理的人間行動は、所与の法則とみなすべきものなのか、さらに進化論的合理性からの基礎づけを求めるべきなのかは、見解が分かれている。また、今日では、合理的経済人を前提しないアプローチとして、大量の経済データから普遍法則を見いだす「経済物理学」と呼ばれる手法も始まっている。 (松尾匡) |