基礎研WEB政治経済学用語事典

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 単純再生産

 単純再生産とは、不変の規模での再生産のことであって、年々生産される剰余価値の全部が資本家によって個人的に消費され、生産の拡大に向けられない場合である。マルクスは社会的総資本を生産手段生産部門と消費手段生産部門の2部門に区分し、年々の総生産物を以下のように構成し、単純再生産が成立する条件を考察している。
 
 T(生産手段生産部門)4000c + 1000v + 1000m = 6000
 U(消費手段生産部門)2000c + 500v + 500m = 3000
 
 このうちT4000cは部門内で交換される。T部門で消耗された不変資本を補填するのに役立つ。また、U500v + U500mも部門内で交換される。労働者の賃金であるU500vは所得として個人的に消費される。U500mも資本家によって個人的に消費される。こうして、T4000cとU500m+U500mのそれぞれは部門内交換で流通過程から消滅する。
 
 ところがT部門の1000v+1000mは生産手段の形態で存在するので労働者や資本家は直接消費できない。またU部門の2000cは消費手段の形態で存在するため生産手段を補填することができない。ここからT1000v+T1000mとU2000vがお互いに交換されなければならない。したがって、単純再生産のもとではT部門の可変資本と剰余価値の総額がU部門の不変資本と等しくなければならない。すなわち単純再生産の成立条件はT1000v+1000m=U2000cである。こうしてはじめて、1部門の労働者と資本家は彼らの生産物が生産手段の形態をとっているにもかかわらず消費手段を入手でき、U部門の資本家は、その生産物が消費手段の形態をとっているにもかかわらず生産手段を入手できることになる。
 
 

(1) マルクス『資本論』第2巻。
                                        (江尻彰)