基礎研WEB政治経済学用語事典

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 柴田・置塩の定理

 マルクスは、有機的構成が高度化することで利潤率が傾向的に低下する法則を唱えたが、後年、搾取率が上昇すれば利潤率は低下するとは限らないとする批判が起こった。置塩信雄はそれに対して、有機的構成が高度化すると、最大限利潤率が低下するということを示し、マルクスの命題を擁護した。
 
 しかし置塩は、実質賃金率が不変の限り、利潤率低下をもたらすような有機的構成の高い技術を資本家が導入することはないということを示し、この法則の現実性を否定した。これは、柴田敬がすでに戦前に述べていたことであり、「柴田・置塩の定理」と呼ばれている。
 
 これに対しては、費用低下基準(=利潤率上昇基準)で技術を選ぶ前提をおく限り、同義反復であるとの批判がなされている。しかし、マルクスの命題は、資本家がミクロには利潤率を高めるように、有機的構成高度化技術を導入した結果、それが経済全体で合成されたマクロでは利潤率が低下するというものであった。置塩の示したものはそれに対して、資本家のミクロでの利潤率を高める技術導入が、それが合成された新たな生産価格体系においても、利潤率を低めることはないということであり、トリビアルな命題ではない。
 
 結局、資本家は実質賃金率の上昇に強いられることなしには、利潤率低下につながる技術導入を行うことはないというのが置塩の結論であった。
 
                                        (松尾匡)