基礎研WEB政治経済学用語事典

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 ジャストインタイム

 ジャストインタイム(JIT)生産方式はトヨタ生産方式を特徴づけるトヨタ用語の1つで、その意味は「必要なものを必要なときに必要なだけ」生産すること、すなわち大ロット生産を排して、無在庫経営を実現することである。その背景は製品多様化に伴う市場変動が激しくなり、仕掛り在庫が販売ロス(売り損じ)に直結するリスクが非常に大きくなったことである。
 
 だからといって注文生産にしてリードタイム(注文から納品までの時間)が長くなれば機会ロス(注文を他企業に奪われること)が大きすぎる。そのため販売動向を細かく捕捉し、それに即して生産品目を素早く変更することと、それに伴う設備稼働率の変動を抑え、生産の平準化を行うことが必要になる。この矛盾した要求を解決するために、同一生産ラインで多車種を製造する混流生産、さらにはラインを流れる1台ごとに車種を変える一個流しが行われる。
 
 そして下請け企業に指示して、必要なもの(ラインを流れる車種に即した部品)を必要なだけ(指示された分量)生産し、必要なとき(製造タイミングに合わせて)生産ラインの近くに納入させる。そのための生産指示(品番、数量、納入時刻)カードがカンバンと呼ばれ、ジャストインタイム方式の代名詞となっている。仕掛り在庫がほとんどないので、部品納入が遅れると生産停止になり、納入メーカにペナルティが課せられる。市場動向に振り回されて激変する生産指示に操られ、一糸乱れず瞬時に活動することが要求されるので、下請けメーカにとっては大変な重圧になる。
 
 ジャストインタイム方式は自動車だけでなく多分野のサプライチェーン(供給連鎖)に広がり、グローバルに拡大している。繊維流通部門ではQR(クイックレスポンス)方式とも呼ばれる。
 
 

(1)大野耐一『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして―』ダイヤモンド社、1978年
(2)門田安弘『トヨタプロダクションシステムーその理論と体系―』ダイヤモンド社、2006年
                                       (野口宏)